一生の予防につながる
避妊・去勢手術
避妊・去勢手術の目的
不妊手術を行う最大の理由は、望まない妊娠を防ぐ、性ホルモンに関係する病気を未然に防ぐことにあります。
発情に伴う行動
- 雄犬
-
マーキングにより排尿の回数が増え、おうちの家具や壁などに排尿してしまうことがあります。
優勢行動といって、自分のポジションを主張する行動が見られることがあり、時に言うことを聞かなくなる場合があります。
マウンティングすることがあります。 - 雌犬
-
6〜12ヶ月の周期で発情出血(生理)が見られ、そのあと約2ヶ月間は偽妊娠と呼ばれる時期があり、さも妊娠し、出産したかのような母性行動が見られることがあります。
乳腺が発達して、乳汁が分泌されたり、ぬいぐるみなどを子どもに見立ててお世話するようなこともあります。
また、性格が攻撃的になることもあります。 - 雄猫
-
雄犬と同じようにスプレーと呼ばれるマーキング行動が見られることがあります。
外へ出たがったり、喧嘩早くなる場合が多いです - 雌猫
-
発情期には、特有の大きな鳴き声で鳴き続けたり、不適切な排尿、体のすりつけが見られることがあります。
猫の発情期は初春と秋に起こることが多く、1回の発情期で妊娠しなければ1週間程度発情が続きます。
その後、いったん落ち着き、また1週間程度経つと再び発情するというサイクルを2〜3回繰り返し、その時期の発情期が終焉します。
予防できる病気
生殖器に発生する代表的な病気をいくつか載せます。
避妊・去勢手術によりこれらの病気や問題になる生殖行動が予防できます。
乳腺腫瘍
初発情前に手術を行うことで、100%発症を防ぐことができます。
動物の乳腺腫瘍は、早期に避妊手術を行わなかった中高齢に多く認められます。
犬の場合は、偽妊娠と呼ばれる期間があり、この期間中さも妊娠したかのように乳腺が張り、乳汁が分泌されます。この乳腺への刺激が乳腺腫瘍の発生に関わっています。犬の乳腺腫瘍は、良性と悪性が半々と言われています。猫の乳腺腫瘍は、9割が悪性です。悪性の場合は早晩転移を起こし死に至ります。
子宮蓄膿症
子宮に細菌感染が起こり、膿(うみ)がたまり炎症が起こります。この膿は大腸菌などの細菌や炎症反応によるもので、腎不全や菌血症、さらに進行すれば腹膜炎や敗血症となり死に至ることもあります。発情周期のうちいわゆる生理の後、2ヶ月間にわたり黄体ホルモンが分泌され、子宮内に感染が起こりやすくなるため、この時期に発生することが多いです。
症状は、食欲不振、多飲多尿、陰部からオリモノの排出、嘔吐などが見られます。
避妊手術をしていない中高齢の犬に多く見られますが、動物は閉経をしないため、15、6歳の超高齢の動物にも見られることがあります。
子宮腺癌
3歳以上の避妊手術をしていないうさぎの50〜80%の雌ウサギに見られると言われています。
血尿などの症状が見られます。
精巣腫瘍
中高齢の去勢していない雄に見られます。
精巣腫瘍は3種類あり、腫瘍の種類によってその病態が異なります。特にセルトリ細胞腫では女性ホルモンが過剰に分泌されることにより、貧毛になったり、乳頭の腫大や貧血が見られます。また、一部の腫瘍ではリンパ節や周囲臓器に転移することもあります。
また、精巣が陰嚢内に下降しない状態を停留精巣と呼び、これらの腫瘍の発生率が高くなると言われています。
前立腺疾患
良性の前立腺過形成(肥大)や前立腺嚢胞(前立腺の中に液体が貯留する)ができることがあります。疾患が大きくなると、骨盤腔内に占める割合が大きくなって排便しづらくなったりすることがあります。
また、前立腺癌も発生があります。症状は、感染が起こったり重症化することで、排尿と無関係の血尿や痛みによる食欲減退などが見られます。
会陰ヘルニア
肛門の横にある筋肉が薄くなることで、本来腹腔内に位置する直腸や前立腺や膀胱がここから脱出し、肛門の横が膨らんだり、排便・排尿困難となります。
治療法は、外科手術になります。
うさぎ
うさぎさんは、一定の発情周期はあるものの、ほぼ常に排卵可能な成熟卵胞がある状態なので、基本的には年中繁殖が可能です。そのため、偽妊娠だけでなく、子宮や乳腺の病気の発症も多いことが知られています。例えば子宮腺癌、子宮水腫、子宮内膜炎、嚢胞(のうほう)性乳腺腫などの病気が挙げられます。これらの病気は加齢に伴い発症率が高くなるため、予防のためには2歳くらいまでに避妊手術をすることが推奨されています。
また避妊していない女の子のうさぎが偽妊娠の症状を示している場合には、乳腺が異常に腫れたり、しこりができたりしていないか、あるいは熱をもったりしていないか、お腹が腫れていないか、血尿が出ていないかなど、こまめにチェックしてあげることが大切です。
手術までの流れ
- 1.術前診察、日にち決定
-
基礎疾患などがないか診察します。必要に応じて各種検査を行うことがあります。
潜在精巣や遺残乳歯、発情などをチェックします。
手術日を決めます。
手術は原則として、月・火・(水)・金・土(日帰りのみ)に行っています。 - 2.手術当日
-
深夜0時以降は絶食です。お水のみ朝まで通常通り与えていただいて構いません。
当日、体調を確認して午前9時から11時までの間にご来院ください。
診察後、手術まで、入院室へお預かりとなります。
犬は点滴の管の設置及び抗生剤の投与を行います。 - 3.手術
-
午前診療が終わり次第、麻酔を施します。
その後、毛刈り・消毒を行なったのち、手術を始めます。 - 4.術後
-
麻酔から覚醒したら、入院室へ戻り様子を観察します。
当院で主に使用している麻酔薬は、痛みを和らげ、術後パニックを起こさないよう鎮静状態が少し保たれます。 - 5.退院
-
原則として、ネコちゃんは午後5時半ごろ、ワンちゃんは翌日の退院となります。
麻酔の覚醒状況や全身状態により退院時間が前後する場合には、その都度お電話にてご連絡させていただいております。
日帰り手術を行ったネコちゃんについて
日帰り手術を行っている猫ちゃんの場合には退院時にはややぼーっとした状態でお返しします。
術後、医療介入が必要のない状態であることを確認した上で退院としています。
ご自宅で様子を観察していただき、何かある場合にはすぐに携帯に連絡いただければ、対応いたします。
毎年の予防
「ワクチン接種」
狂犬病予防接種
狂犬病とは
狂犬病は、一旦発病してしまうと、人・動物共にほぼ100%死亡する大変恐ろしい病気です。
日本では1950年に撲滅されて以来、その発生はありません。しかし、海外では毎年アジア・アフリカを中心におよそ5万5千人の人が狂犬病で亡くなっています。
世界保健機関(WHO)では、『狂犬病の流行を阻止する最低目標はワクチンの接種率が70%以上』としています。
日本では、狂犬病予防法により犬の登録と狂犬病予防接種が義務づけられています。
詳しくは→https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=79028000&dataType=0&pageNo=1
犬の飼い主さんの義務
- ■犬の登録
- 新しく飼い主になる場合は犬が来た日から30日以内に、最寄りの市区町村長に登録を受けること
- ■狂犬病予防接種
- 生後91日以降の犬は年1回予防接種を受けること(狂犬病予防法より抜粋)
登録についての当院対応
- ■横浜市にお住まいの方
-
犬の登録は随時、当院で手続きすることができます。(登録料3,000円、済証料550円は預かり金のため現金のみのお会計となります)
注射の接種の際には、3月に役所から送られてきました3連の申請用紙をご持参ください。 - ■大和市にお住まいの方
-
※毎年4月〜6月まで、代行手続きを承っています。
※ご希望により注射済み証をお渡ししていますので、ご自身で窓口でお手続きいただくこともできます。
混合ワクチン
混合ワクチンとは
混合ワクチンは、犬同士・猫同士のウイルス性疾患の伝染を予防するために接種する注射です。
ワクチンを接種することで抗体を作り、ウイルス性疾患を予防します。
例えば、ドックランやトリミングサロン、お散歩など不特定多数の動物と接触する機会がある場合、ワクチン接種がなされていないと重篤で死に至ることもあるウイルス性疾患に感染してしまうことがあります。
ペットホテルやトリミングをご希望の方は伝染病予防の観点から毎年の接種をお勧めします。
当院のワクチンプログラム
■犬
- 1回目 生後2ヶ月(以降)
- 2回目 生後3ヶ月(1回目ワクチンの1ヶ月後)
- 3回目 2回目のワクチンから約1年後に追加接種
それ以降は毎年1回の接種または抗体価検査を推奨しています
■猫
- 1回目 生後2ヶ月(以降)
- 2回目 生後3ヶ月(1回目ワクチンの1ヶ月後)
- 3回目 2回目のワクチンから約1年後
それ以降、完全室内飼で感染の恐れがほぼない場合には3年に1度の接種を推奨しています。
ネコちゃんの場合、猫ヘルペスウイルス(いわゆる猫のインフルエンザ)の伝染力が強いために、完全室内飼いであったとしてもオーナーさまがそのウイルスを運んできてしまう可能性があるため、接種を推奨しております。
とはいえ、抗体がなくなってしまうのには数年かかりますので、当院では3年に1度の接種を推奨しております。
ワクチン接種の無い年にはぜひ健康診断のためにご来院ください。
ワクチン接種の注意事項
ワクチンはアレルギーなどによる副反応が起こることが稀にありますので、午前中または午後の早い時間帯に接種することをお勧めします。
万が一、何かあった場合にも病院で対応ができますので、安心です。
通年で注意が必要な
虫による病気の予防
フィラリア
蚊に刺されることよって犬糸状虫という寄生虫が体内に入り込み、最終的に心臓に寄生します。
多数の虫体が寄生することにより、心不全や肝硬変、腎不全など種々の臓器の機能不全を起こして死亡します。また、寄生していた虫体が移動して、突然の血尿や循環不全を起こし急性経過を取る場合があります。
この病気は、月1回のお薬を投与することで100%予防できます。投与の前には、感染していないことを確認してから投与を始めます。期間は、蚊が出始める5月から11月末までとなります。
ノミ
ノミはゴマ粒のような小さな虫です。成虫は体長約2mmほどの大きさで成虫だけが寄生性で、幼虫やさなぎ、卵は動物の居場所となる周囲環境で発育します。
ノミに寄生されると痒みがあったり、ノミアレルギー性皮膚炎を起こすことがあります。
また、人も刺されることがあります。とにかく痒いです。
その他、瓜実条虫、人には猫ひっかき病という病気が発生することがあります。
ノミを見つけるポイント
- ノミの成虫は光が嫌いなので、見つけようとすると毛の中や穴に隠れてしまいます。
- ノミを発見するポイントはノミ糞を見つけることです。白い、または色の薄い床の上などで、動物の毛をバサバサとはたきます。
- ノミ寄生がある場合は、砂つぶのようなノミ糞が床に落ちてきます。砂かどうか判断がつかない時は水で濡らしたティッシュに乗せて揉んでみます。ノミ糞の場合は、その食料が血液なので褐色に滲みます。
ノミが引き起こす症状
ノミが集ると痒くなります。ノミアレルギーの犬や猫では背中や尾の付け根が痒くなり湿疹ができることがあります。また、人も刺されたり、伝染病を媒介したりします。
ノミの駆除はノミ取り櫛だけではできません。ノミ取りシャンプーでもできません。相手もさるもの、ちゃんと捕まらないように隠れます。
ですから、ノミ退治はノミの駆除薬を使いましょう。
市販のノミ除けは、ノミを避けるだけで、完全に死滅しない場合もあります。
マダニ
マダニもノミと同じように屋外にいます。草の先端で待ち構えていて、お散歩などで体に付着し、その頭を皮膚に食い込んで吸血します。吸血するとぐんぐん大きくなりてんとう虫くらいに膨らみます。まるでイボホクロのように見えます。
無理やり取ろうとすると頭の部分だけが皮膚に残って炎症を起こすことがありますので、無理に取らずに病院へいらしていただくか、マダニ予防薬を塗布して自然に落ちるのを待ちます。
マダニが媒介する病気に、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)があります。
詳しくはhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169522.html
いざという時のための
マイクロチップ
マイクロチップは、直径約2mm、長さ約1cmの生体適合ガラスのカプセルで包まれた小さな電子標識器具です。マイクロチップの中には、15桁の固有番号が記録されています。
マイクロチップは、専用の針を用いて、動物の肩甲骨の間あたりに埋め込みます。麻酔などは特に必要としません。
埋め込まれたマイクロチップは、マイクロチップリーダーをかざすことで、この番号を読み取り、この番号を登録センター(通称AIPO)に問い合わせることで、飼い主がわかる仕組みになっています。
マイクロチップ自体は電磁波などを発しませんし、生体内で何か反応が起こることはありません。
令和元年6月には、ペットショップで販売される犬猫にマイクロチップの装着を義務付ける様、動物愛護管理法が改正されました。
詳しくはhttps://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pickup/chip.html
健康診断
人間ドックのような健康診断を、動物たちに行う検査です。
検査では、特定の臓器を詳しく調べるのではなく、どこか異常なところがないかを幅広くチェックします。
健康であることのチェックと病気の早期発見のため、1年に1~2回の定期的な受診をお勧めします。