症例紹介

糖尿病猫の重度の歯周炎・歯肉口内炎

病気の紹介

もともと、外でごはんを食べていた猫ちゃんが皮膚炎と歯周病で保護されました。

皮膚にかき壊しがあるということで、抗生剤とステロイドによる治療を2週間ほど行いました。

皮膚の状態が良化したので、歯科治療を行うための術前検査を行なったところ、血糖値が588mg/dlと糖尿病の疑いがありました。

インスリンによる治療を開始しましたが、インスリンの量を増やしてもなかなか血糖値は下がってきません。安定したところで、全身麻酔下にて歯科治療を行おうと考えていましたが、なかなか血糖値は下がりません。炎症や痛みによるインスリン抵抗性も考えられました。

処置当日は、短時間型インスリンを使いながら血糖値をコントロールしつつ処置を行うこととしました。

写真のように、歯根がむき出しになるほどの歯周炎と尾側の歯肉口内炎がありました。麻酔下で視診、歯科レントゲン検査を行なったのち、全臼歯抜歯を行いました。

処置後、食べにくさはなくなり、本猫も快調そうです。

1〜2週間ごとに血糖値の測定と口腔内の診察にいらして頂きました。

血糖値は、ぐんぐん下がり、インスリンを減薬していきました。それでも下がってしまうので、インスリンは休薬としました。

下の写真は、その時の口の中の写真です。

歯石や歯垢が付着していた歯がなくなったため、粘膜の炎症がほとんどなくなりました。炎症がないということは痛みもほとんどないということになります。

炎症や痛みは、内因性のストレスホルモンが分泌されて血糖値を上昇させることがあります。また、初期の皮膚治療のために使用したステロイドも血糖値を上昇させ、糖尿病を誘発させることもあります。

この子の場合は、歯科治療により炎症や疼痛が消失したため、インスリン抵抗性がなくなり、糖尿病も改善したと考えられました。