Dental
歯科疾患
うちの子と比べてみよう!
若い犬の口腔写真
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側面から
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正面から
若い猫の口腔写真
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側面から
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正面から
健康な歯は? 歯ぐきは? においは?
チェックしてみよう!
- 歯の表面:きれいな歯は真っ白で、硬く光沢があります
- 歯ぐき:色 正常はきれいなピンク 赤い・出血は歯周病のサイン
- 口臭:ふつうは嫌な匂いがしません
- だ液:ふつうはサラサラ透明
- 噛み合わせ:下記参照
- お口の中見せてくれますか?:痛みがあったり、トラウマがあったりすると嫌がることがあります。
お口の中を観察する方法
※当院での診察台の上でのやり方になります。
ご自宅ではいろいろなスタイルがあると思いますので、やりやすい、嫌がらない姿勢をお選びください。
犬
マズルを軽く持ちます。持ったその手の人差し指または親指で軽く唇を持ち上げます。こうすると前歯と犬歯が見えます。奥歯はもう片方の手で、唇を外方へ引っ張るようにします。
猫
頭をボールのように持ちます。持ったその手の人差し指または親指で、歯が見えるように唇を動かします。
動物は、お口を開けようとすると反射的に閉じようとします。無理矢理開けずに、この方法で、まずは歯の外側を観察してみてください。
歯周疾患は恐ろしい

ヒトにおいて、日本では10本以上の未処置の虫歯があることを口腔崩壊と言います。
口が‘崩壊’するんです。
口は、生命を維持するための栄養の入り口であり、歯はその消化のための第1歩です。
この歯を使うことができなければ、‘元気に食べる’ということができません。(犬や猫のフードは、噛まなくても飲み込めるサイズになっていますので、歯はなくても食べることはできます)
歯磨きをしていない口の中には、たくさんの常在菌以外の歯周病関連細菌が増殖し、それは、歯茎の炎症のみならず、血流に乗って全身への波及の影響も及ぼし、腎不全や心内膜炎を引き起こしたり、他の炎症性疾患を重篤化させることがあります。すなわち、その子の健康寿命に大きく関わるのです。
口臭は主にこの歯周病細菌が産生するガスの匂いであり、口臭と歯周病の重症度は比例します。
口腔疾患
歯周病(歯肉炎&歯周炎)
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側面から
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正面から
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側面から
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正面から
写真は重症例です。
歯周病は、見た目で分かりますので、発見のしやすい病気です。
歯肉炎→歯周炎と進行します。
歯周病の発生と進行

まず歯の表面にプラークバイオフィルムが形成されます。このプラークには500種類以上、1mgのプラークにつき10億個の細菌が存在します。
歯周組織の破壊=歯周炎を引き起こす歯周病原性細菌は、毒素や組織破壊酵素を産生します。歯垢が石灰化して歯石に変化するのは、臨床的には2〜3日と言われています。歯周病原性細菌は、有害物質を産生し続けます。動物自身は炎症を起こすことで、これに対抗しようとします。それにより、歯周ポケットがだんだんと深くなり、最終的には歯が抜けてしまうことも少なくありません。また、根尖周囲病巣、歯髄炎、口腔鼻腔瘻、歯瘻、歯周病性下顎骨折などの顎顔面疾患を引き起こすこともあります。要は、歯の周りの骨がとけて、なくなり、それにより口と鼻がつながって穴が開いてしまったり、あごが折れたりしてしまうこともあるのです。
歯周病の進行に関連するリスク因子
犬種:大型犬よりは小型犬は歯周病になりやすいと言われています。
疾患:糖尿病や免疫不全、不正咬合や歯そのものの奇形、ドライマウス(ネバネバの唾液)
一般的に歯垢・歯石の付着率が高くなるほど、歯周病の発生率も高くなると言われています。歯を磨耗しやすい食事や咀嚼行動は、歯垢・歯石の付着率を低くするため、歯周病になりにくいことが報告されています。
歯周病と全身性疾患との関連
ヒトでは、種々の心疾患、早産、血栓形成、細菌性肺炎と歯周病の関連が強調されています。循環血液中に入り込んだ歯垢細菌及びその産生関連物がこれらの起因となると言われています。
犬でも、心疾患や腎不全、肝臓障害などが歯周病に関連して認められたとの報告があります。
実際、当院においても、歯周病と腎不全の併発は、多く見受けられ、また、敗血症性疾患(子宮蓄膿症や膵炎など)において、重度の歯周病を抱える動物は、その疾患の程度も重度であることを多々経験しています。
顔面の骨を溶かす疾患(根尖周囲病巣、口腔鼻腔瘻)
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上顎第4前臼歯の歯根部分周囲の骨が大きく溶けています。
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破折による根尖病巣。病巣の直上の皮膚に穴が開いて、排膿します。
抜歯をしない限り、これは治癒しません。 -

犬の犬歯の根っこは、鼻腔に数mmの骨で接しているため、歯周病により周囲の骨が溶かされるほどになった場合や、鼻水やくしゃみが出ます。
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口腔鼻腔瘻。犬歯のポケットが深くなると、鼻腔内に通じて、くしゃみや鼻血などが見られます。
症状
くしゃみ、鼻水、鼻血(口腔鼻腔瘻)、頬や鼻、下顎などが腫れる、目やにや結膜の充血など(根尖周囲病巣)、顔面周囲の皮膚に炎症を起こしたり排膿する(外歯瘻)
治療
原因となる歯を抜歯したのち、周囲の組織をきれいにし、粘膜でその穴を塞ぐ手術を行います。
歯の吸収病巣
吸収性病巣
猫に多く見られ、かつては猫破歯細胞性吸収病巣と呼ばれていました。
最近は犬にも見られます。
その名の通り、破歯細胞という歯を壊し溶かしてしまう細胞が歯を吸収し、吸収された部位には肉芽が増殖するので、出血しやすく、痛みを伴います。タイプがいくつかありますが、進行するに従い、歯がなくなったように見えたり、逆に肉芽や出血、周囲の炎症を伴うため歯石が過剰に蓄積していることもあります。
1本の歯だけでなく、複数の歯に見られることも多く、歯石を除去して初めてわかることもあります。吸収病巣が歯髄まで進んだ歯は、噛むことで痛みを感じるため、犬や猫はこの歯を避けて噛むような仕草をします。また、とても痛いので、病巣になっている歯の歯磨きを嫌がることが多いです。
犬の吸収病巣
歯頚部が溶けています。
歯髄まで侵されると痛みを感じるため、噛むときに使わなかったり、歯磨きを嫌がるようになります。
猫の吸収病巣
歯頸部の骨が虫食い状に溶けています。見た目は、一見歯周病の歯に見えますが、歯冠部のみが動揺し、根っこは残存したままとなります。この状態では、根っこの神経が露出したままとなり、痛みや炎症は治りません。
猫の歯肉口内炎・犬の慢性潰瘍性口内炎
猫の口腔後部(尾側、頬の内側から奥の方の上下にかかる粘膜)の粘膜が強い炎症を起こし、真っ赤になり、野いちご状に膨れます。何よりも痛みが強く、よだれや食事をするときに不快感があるため、食べ物を口からこぼしたり、硬いものが食べられない、口を引っ掻くような仕草をする、色や匂いのヨダレが口の周りや、前足の内側に付着するなどの症状が見られます。
保護猫、外出猫、カリシウイルス感染の既往猫、多頭飼育の猫ではより多く見られます。
ステロイドによる炎症・痛みのコントロールは可能ですが、生涯にわたり、その副作用も懸念されますので、治療の基本は、全臼歯抜歯または全顎抜歯となり、それでも粘膜の炎症が残る場合などは、炎症粘膜の除去が必要になります。
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治療前
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治療後(全臼歯抜歯後)

犬でも似たような疾患があり、慢性潰瘍性口内炎と呼ばれます。これも上記の猫の歯肉口内炎に症状は類似しますが、基本的には歯垢に対する口腔内免疫の異常・過剰反応による炎症であるため、歯に接触する粘膜全てに炎症を生じます。歯茎の粘膜、頬の粘膜はもちろん舌の側面にまで広がることもあります。血液検査においても、炎症マーカーは歯周疾患のうちでも唯一上昇します。
徹底的なプラークコントロールをしても、歯周ポケット内に存在する細菌等までも全て除去することは困難であるため、この疾患の治療も全臼歯抜歯または全顎抜歯が適応となります。
この疾患は、とにかく口内炎がひどく痛いため、動物は口を触らせることは無論させてくれず、食べる度に疼痛が襲うため、性格の変化も見られることがあります。
予防が可能な歯周疾患
遺残乳歯、不正咬合
犬や猫の歯は生後3週間で、乳歯が生え揃います。
その後、犬では生後約5ヶ月から、猫は生後約4ヶ月から、前歯、犬歯と奥歯の順にが生後約6ヶ月で萌出し、生え変わりが終わります。
人は乳歯が抜けてから、永久歯が生えますが、犬や猫では、通常、永久歯が乳歯の半分くらいまで萌出してきたところで、乳歯が脱落します。この期間は最長で約2週間と言われており、その期間を過ぎても共存する場合は遺残乳歯と呼ばれます。
遺残乳歯があると、大人の歯の発生位置がずれてしまうため、噛み合わせが悪くなり、『噛み締める』『歯を食いしばる』ことができません。それにより、奥歯までもが噛み合わさらず、歯垢や歯石は蓄積しやすくなり、歯周病を助長する可能性があります。
遺残乳歯は、永久歯の咬合の異常や歯周病の原因になることがあるので、全て抜歯が必要となります。また、抜歯の時期は、永久歯が生えそろってからではなく、咬合に異常をきたす恐れがあると判断された場合、それぞれの歯について2週間の共存期間を過ぎている場合、速やかに行います。
そうしないと、不正咬合につながる恐れがあります。
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下顎犬歯の遺残乳歯
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奥歯の遺残乳歯
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抜歯後、きちんと噛み合うようになりました
破折

硬いものを噛んだりすることで、歯が折れたり欠けてしまうことがあります。犬用のおやつとして売られているひづめやアキレスなどを噛んで、欠けたりすることもあります。欠けた部分には、歯石が沈着しやすく、のちに歯周炎や、痛みが生じたりする場合があります。破折したところから細菌が入り込み、歯根の先端の部分に膿が溜まる根尖周囲膿瘍を引き起こすことがあります。
治療には、破折の部位、破折してからの経過時間、その後の定期観察及びオーラルケアなどにより、保存するか抜歯するかなどの治療方針を決めます。
治療
口腔外科が必要な疾患
顎骨折(歯周病による下顎骨折)
歯周病や交通事故、衝突などにより、顎の骨を骨折してしまうことがあります。
特に、小型犬種では、顎と歯の大きさが相対的に近くなるため、歯周病が進行した時、下顎骨が吸収(溶けて)骨折することがあります。
治療は、歯周病の治療を行い、病因となっている歯は抜歯し、固定に使えそうな歯または支持組織が残っている場合にはそれを利用して固定を行います。
骨折は、骨折端を合わせて固定することで、約1ヶ月で癒合してきます。
ただし、口は常に動かして使う組織ですので、“固定”が難しく、その治癒が難しいことがあります。
口腔内腫瘍
歯周疾患が存在するとその免疫刺激により、腫瘍ができやすくなったりします。口腔内にできる腫瘍は骨に浸潤するような悪性のものができることが多いため、普段からの口腔内ケアが最善策となります。骨に浸潤した腫瘍の場合、顎切除を行うことになったり、切除しきれなかったり、その部位に感染が起きたり、リンパ節への転移も発生することから予後が非常に悪いです。
悪性腫瘍の場合は、基本的に腫瘍科への転科となります。
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線維肉腫
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悪性黒色腫
歯原性腫瘍
歯茎に発生する腫瘍を歯原性腫瘍と呼びます。かつては、エプリスとも呼ばれていました。
非腫瘍性のものには、歯肉過形成(線維性エプリス)や炎症性エプリスがあり、歯垢や歯石による炎症や外傷により発生すると言われています。
良性の腫瘍には、周辺性歯原性線維腫(骨形成性・骨性エプリス)があり、歯根部より発生します。
悪性の腫瘍には、棘細胞性エナメル上皮腫と呼ばれるものがあり、顎骨への強い浸潤性を保つため、急速に大きくなったり、顎の変形を伴うこともあります。悪性腫瘍の場合は、顎の切除が必要となります。
歯茎に発生した腫瘍は、切除後、病理検査により診断する必要性があります。
周辺性歯原性線維腫(骨形成性・骨性エプリス)の診断でしたが、再発したため、犬歯の抜歯を行いました。
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歯肉過形成(線維性エプリス)
無麻酔歯石除去について
無麻酔での処置は禁忌です。いくら歯の表面だけをきれいにしても、歯周病の予防や治療にはなりません。最も重要なことは、歯周病が活発な部位である歯肉ポケットや歯周ポケットの歯垢・歯石を除去することなのです。
無麻酔では、その処置ができないばかりか、処置に伴い出血したり動物が嫌がり損傷したりすることがあります。表面だけが清掃されて、見た目はきれいになりますが、根っこの部分はどんどん病状が進行して、気づいたときには下顎骨折してしまうこともあります。
無麻酔歯石除去は、一部の動物病院やトリミングサロンでも行われていることがあります。そういった場所の処置でも無麻酔で歯石を除去することは禁忌とされており、獣医師法に抵触することさえあります。












